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相続人と連絡が取れない時、相続はどうなる?行方不明・音信不通の親族がいる場合の対処法

更新日:2026.02.26 コラム

相続が発生すると、遺産をどう分けるかを決めるために、相続人全員が関わる必要があります。しかし、実際には「長年連絡を取っていない兄弟がいる」「存在すら知らなかった相続人がいた」といったケースは決して珍しくありません。

戸籍を調べて初めて、疎遠な親族や、離婚した前妻の子など、予想外の相続人の存在が明らかになることもあります。こうした状況で、その相続人と連絡が取れない場合、相続手続きはどうなるのでしょうか。

実は、連絡が取れないからといって「その人を除外して進める」ことはできません。放置してしまうと、遺産分割が成立せず、不動産の名義変更も預貯金の解約もできないまま、手続きが止まってしまいます。今回は、相続人と連絡が取れない場合に起こる問題と、その対処法について解説します。

相続手続きは「相続人全員の関与」が原則

相続では、亡くなった方の財産をどう分けるかを、相続人全員で話し合って決めます。この話し合いを「遺産分割協議」といいます。

遺産分割協議は、相続人全員の合意がなければ成立しません。たとえ相続人が5人いて、そのうち4人が合意していたとしても、残り1人の同意が得られなければ、協議は無効です。「ほとんどの人が賛成しているから」という理由で進めることはできません。

また、遺産分割協議書には、相続人全員の署名と実印による押印が必要です。1人でも欠けていれば、法務局での不動産の名義変更手続きや、金融機関での預貯金の解約手続きを受け付けてもらえません。

つまり、連絡が取れない相続人が1人でもいると、相続手続き全体が止まってしまいます。これは、相続において非常に深刻な問題となります。

よくある「連絡が取れない」ケース

では、どのような場合に「連絡が取れない相続人」が現れるのでしょうか。よくある例をご紹介します。

長年疎遠な兄弟姉妹

最も多いのが、長年連絡を取っていない兄弟姉妹です。若い頃に何らかの事情で仲違いし、数十年にわたって音信不通になっていた、というケースは少なくありません。現住所も電話番号も分からず、どこに住んでいるのかさえ不明という状態です。

離婚・再婚で存在を知らなかった相続人

亡くなった方が過去に離婚していて、前の配偶者との間に子どもがいた場合、その子も相続人になります。しかし、離婚後に一切の交流がなく、現在の家族がその存在を知らなかった、ということもあります。戸籍を調べて初めて「知らない相続人がいた」と驚くケースです。

海外在住で連絡先が分からない

仕事や結婚で海外に移住し、日本との連絡が途絶えてしまっている親族もいます。海外のどこに住んでいるのか、どうやって連絡を取ればいいのか分からず、困ってしまうことがあります。

高齢で認知症が進んでいる相続人

相続人の中に、認知症が進行して意思表示ができない方がいる場合も、実質的に「連絡が取れない」状態といえます。本人と会うことはできても、遺産分割の内容を理解して同意することができないためです。

行方不明・生死不明の相続人

最も対応が難しいのが、完全に行方不明になっている相続人です。住所も分からず、生きているかどうかさえ不明、という状態では、通常の方法では協議を進めることができません。

連絡が取れないと実際に起きる問題

相続人と連絡が取れないまま放置すると、具体的にどのような問題が起きるのでしょうか。

不動産の売却や処分ができない

亡くなった方名義の不動産を売却したり、取り壊したりするには、まず相続人名義に変更する必要があります。しかし、遺産分割協議が成立しなければ、名義変更ができません。結果として、不動産を処分することも、有効活用することもできず、固定資産税だけを払い続ける状態になります。

預貯金の解約手続きが進まない

銀行口座の解約や、株式の名義変更なども、遺産分割協議書が必要です。相続人全員の同意が得られなければ、預貯金を引き出すことができず、葬儀費用や当面の生活費の支払いに困ることもあります。

相続税申告ができずペナルティが発生する可能性

相続税の申告期限は、相続開始を知った日から10ヶ月以内です。遺産分割が決まらなくても、期限内に申告・納税をしなければ、延滞税や加算税といったペナルティが課される可能性があります。遺産分割が成立しないことは、申告期限の延長理由にはならないのです。

時間が経つほど相続人が増えてさらに複雑化する

連絡が取れないからと放置している間に、その相続人が亡くなってしまうこともあります。すると、その相続人の配偶者や子どもが新たな相続人として加わることになり、関係者がさらに増えてしまいます。時間が経つほど、問題は複雑化していくのです。

どうしても連絡が取れない場合の法的な対処法

では、どうしても連絡が取れない相続人がいる場合、どうすればよいのでしょうか。法律上、いくつかの手続きが用意されています。

不在者財産管理人の選任

相続人の住所は分かっているが連絡が取れない、あるいは行方不明になっている場合、家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任を申し立てることができます。不在者財産管理人とは、行方不明者に代わって財産を管理し、遺産分割協議に参加する人のことです。

家庭裁判所が選任した不在者財産管理人が、行方不明の相続人の代わりに遺産分割協議に参加することで、手続きを進めることができます。ただし、この手続きには数ヶ月の時間がかかり、裁判所への予納金(管理人の報酬や費用のための保証金)として数十万円から100万円以上が必要になることもあります。

失踪宣告

相続人が行方不明になってから一定期間が経過している場合、家庭裁判所に「失踪宣告」を申し立てることができます。失踪宣告が認められると、その人は法律上「死亡したもの」とみなされます。

失踪宣告には、普通失踪(7年以上生死不明)と特別失踪(危難に遭遇してから1年以上生死不明)の2種類があります。失踪宣告が確定すれば、その人を除いて遺産分割を進めることができます。ただし、こちらも手続きには時間がかかり、通常1年以上を要します。

家庭裁判所での手続きが必要

いずれの方法も、家庭裁判所への申立てが必要であり、必要書類の準備、手続きの進行、裁判所とのやり取りなど、一般の方だけで進めるのは簡単ではありません。法律の知識や実務経験がないと、どの手続きを選ぶべきか、どのように進めるべきかの判断も難しいのが現実です。

また、費用と時間がかかることも覚悟しなければなりません。相続税の申告期限が迫っている場合などは、特に慎重かつ迅速な対応が求められます。

まとめ

相続人と連絡が取れないという問題は、決して特殊なケースではありません。家族関係が複雑化している現代では、誰にでも起こりうる問題です。

しかし、連絡が取れないからといって放置してしまうと、相続手続き全体が止まってしまい、不動産の処分もできず、預貯金の解約もできないまま、時間だけが過ぎていきます。時間が経つほど、新たな相続が発生して相続人が増え、さらに複雑化していくという悪循環に陥ります。

こうした事態を避けるためには、早めの準備と対応が大切です。特に、将来相続人となる方々の中に疎遠な関係の方がいる場合は、遺言書を作成しておくことで、遺産分割協議を不要にすることができます。また、相続が発生した際に連絡が取れない相続人がいることが判明したら、できるだけ早い段階で専門家に相談することをおすすめします。

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