更新日:2025.12.31 コラム
生涯未婚率の上昇、核家族化の進行、家族関係の希薄化――こうした社会の変化によって、「おひとり様」として暮らす人が増え続けています。独身の方だけでなく、配偶者を亡くした方、子どもが遠方にいて頼れない方など、「万が一のとき、身近に頼れる人がいない」という状況は、決して珍しくありません。
「もし自分が倒れたら、誰が病院に連絡してくれるだろう」「入院するとき、保証人をどうすればいいのだろう」「自分が亡くなった後、部屋の片付けや葬儀は誰がしてくれるのだろう」――こうした不安を抱えながら、一人で悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、おひとり様が直面しやすいリスクと、それに備えて今からできる準備について、わかりやすく解説します。
まずは、おひとり様が直面する可能性のあるリスクについて見ていきましょう。
「孤独死」とは、誰にも看取られることなく、一人で亡くなることを指します。近年、この孤独死が社会問題として大きく取り上げられています。特に高齢の単身世帯も増加しており、決して他人事ではありません。
孤独死が起きると、発見が遅れることで、遺体の状態が悪化したり、部屋が損傷したりする可能性があります。また、発見した方や関係者にも大きな負担がかかります。
突然の病気や事故で入院が必要になったとき、病院は緊急連絡先や身元保証人を求めることがあります。家族がいない、または遠方にいる場合、この対応に困ることがあります。
また、手術や治療方針を決める際に、医療同意を求められることもあります。「誰に判断してもらうのか」が明確でないと、適切な医療を受けられない可能性もあります。
亡くなった後、遺体の引き取りや葬儀、部屋の片付け、各種手続きなどを誰かが行う必要があります。親族が近くにいれば対応できますが、親族が遠方にいる場合や、そもそも親族がいない場合、これらの対応が非常に困難になります。
賃貸住宅の場合、部屋の原状回復や家財の処分を誰が行うのか、費用は誰が負担するのか、といった問題も発生します。
次に、実際に起こりうる具体的なトラブルを見ていきましょう。
多くの病院では、入院時に身元保証人を求められます。これは、医療費の支払いの保証や、緊急時の連絡先確保のためです。家族や親しい友人がいない場合、この保証人を見つけることが難しく、入院を断られるケースもあります。
また、手術の同意や、延命治療に関する判断など、本人の意思を確認できない状況で、誰かが判断を求められることがあります。この「誰か」がいないことが、医療現場での課題となっています。
長期入院や認知症の進行により、家賃や電気・ガス・水道などの公共料金の支払いが滞ってしまうケースがあります。本人が手続きできない状態になると、支払いが止まり、滞納が発生してしまいます。
賃貸物件の場合、家賃の滞納が続けば、大家さんや管理会社とのトラブルにつながります。また、公共料金が止まれば、生活そのものに支障が出ます。
孤独死が発生した場合、発見が遅れると部屋が損傷し、特殊清掃が必要になることがあります。この清掃費用や原状回復費用は、通常の退去時よりも高額になり、数十万円から場合によっては100万円を超えることもあります。
こうした費用は、相続人(遠方の親族など)に請求されることがあり、親族にとって大きな負担となります。また、親族がいない場合は、誰が費用を負担するのか、誰が手続きを進めるのかが不明確になり、混乱を招きます。
亡くなった後、部屋に残された家財道具の整理、葬儀の手配、役所への届け出、銀行や保険の手続きなど、多くのことを誰かが行う必要があります。
親族がいない場合、これらの手続きを誰が行うのか、費用はどこから出すのか、といった問題が発生します。結果として、行政や大家さんが対応せざるを得なくなり、多くの人に迷惑をかけてしまうこともあります。
では、こうしたリスクやトラブルを避けるために、今からできることは何でしょうか。
まず大切なのは、緊急時に連絡を取れる人を確保しておくことです。家族や親しい友人がいれば、事前に「何かあったときにはお願いします」と伝えておきましょう。
もし頼れる人がいない場合は、身元保証サービスや見守りサービスなどの専門サービスを利用する方法もあります。民間企業やNPO法人が提供するこれらのサービスは、緊急時の連絡対応や、入院時の身元保証を行ってくれます。
「任意後見契約」とは、将来、認知症などで判断能力が低下したときに備えて、あらかじめ信頼できる人に財産管理や生活の支援を任せる契約です。
元気なうちに契約を結んでおけば、万が一認知症になっても、契約で決めた人(任意後見人)が、あなたの代わりに家賃の支払いや、必要な契約手続きなどを行ってくれます。
任意後見人は、家族だけでなく、弁護士や司法書士などの専門家に依頼することもできます。
「生前整理」とは、元気なうちに、身の回りの物を整理しておくことです。不要な物を処分し、大切な物だけを残すことで、万が一のときに遺品整理の負担を大きく減らせます。
また、通帳や印鑑、重要書類などがどこにあるのかを分かりやすくしておくことも大切です。「エンディングノート」などに記録しておけば、後から対応する人が困りません。
「死後事務委任契約」とは、自分が亡くなった後に必要な手続きを、あらかじめ信頼できる人や専門家に任せておく契約です。
具体的には、以下のようなことを任せられます。
この契約を結んでおけば、親族がいない場合でも、事前に決めた人が責任を持って対応してくれるため、安心です。
弁護士、司法書士、行政書士などの専門家や、死後事務を専門に扱う団体に依頼することができます。
「どんな葬儀にしたいか」「お墓はどうするか」といった希望を、エンディングノートやメモに書き残しておくことも大切です。
盛大な葬儀を希望するのか、家族葬で静かに送ってほしいのか、または葬儀は不要で直葬(火葬のみ)を希望するのか――こうした意思を明確にしておけば、対応する人が迷わずに済みます。
また、葬儀費用を事前に積み立てておく「葬儀信託」や「互助会」などのサービスもあります。費用の心配を減らし、希望通りの葬儀を実現するための選択肢として検討できます。
おひとり様だからこそ、事前の準備が「安心」につながります。
具体的にできることは、
これらの準備は、決して難しいものではありません。一つずつ、できることから始めれば大丈夫です。
また、専門家や支援サービスを活用することで、より安全に、そして安心して生活できます。身元保証サービス、見守りサービス、任意後見、死後事務委任など、おひとり様をサポートする仕組みは年々充実しています。
「自分には頼れる人がいない」と不安を感じているなら、まずは専門家に相談してみることをおすすめします。弁護士、司法書士、行政書士、あるいは終活に詳しい団体などが、あなたの状況に合わせた具体的な提案をしてくれるはずです。
相続マルシェでは、税理士・弁護士・司法書士と提携し、お客様の状況に応じた最適なご提案をいたします。
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