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遺言書が2通見つかった!どっちが有効?正しい判断の方法を解説

更新日:2025.12.25 コラム

「父の遺品整理をしていたら、遺言書が2通も出てきた」「書かれている内容が違うけれど、どちらが有効なの?」

実は、遺言書が複数見つかることは、決して珍しいことではありません。時間をかけて何度も書き直したり、保管場所を忘れて別の場所でまた作成したりすることがあるためです。

この記事では、遺言書が複数ある場合の基本ルール、どの遺言書が有効なのかの判断基準、そして具体的な処理の流れまで解説します。

原則:日付が新しい遺言書が有効

遺言書が複数存在する場合、日付が最も新しい遺言書が有効とされます。これは民法で定められた基本ルールです。後から作成された遺言書が、それ以前の遺言書の内容を変更する(撤回する)と考えるためです。

同じ日付の場合の考え方

まれに、同じ日付で複数の遺言書が作成されていることがあります。この場合は、作成された時刻や状況を総合的に判断する必要があるため、専門家に相談することをおすすめします。

全く同じ内容なら問題なし

もし、複数の遺言書の内容が全く同じであれば、どちらを使っても問題はありません。ただし、念のため日付が新しい方を基準にすることが一般的です。

一部だけ矛盾しているケース

実務でよくあるのが、「一部の内容だけが異なる」ケースです。

例えば、古い遺言書には「自宅は長男に、預金は次男に相続させる」と書かれていて、新しい遺言書には「預金は長女に相続させる」とだけ書かれている場合を考えてみましょう。

この場合、新しい遺言書で言及されている「預金」の部分については新しい遺言書が優先され、言及されていない「自宅」については古い遺言書の内容が生きることになります。つまり、「自宅は長男に、預金は長女に」という形で解釈されるのです。

このように、内容が矛盾する部分については新しい遺言書が優先され、矛盾しない部分については古い遺言書も効力を持ち続けます。ただし、実際の解釈は複雑になることもあるため、専門家のアドバイスを受けることが大切です。

公正証書遺言と自筆証書遺言で扱いが異なる?

遺言書には主に「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」の2種類があり、それぞれ特徴があります。

公正証書遺言の強み
公正証書遺言は、公証役場で公証人が作成する遺言書です。専門家が関与するため、形式の不備が起きることはほとんどありません。また、原本が公証役場に保管されるため、紛失や改ざんの心配もなく、「最も確実な証拠」として扱われます。

公正証書遺言があれば、遺言検索システムで全国の公証役場に照会することも可能です。「他にも遺言書があるかもしれない」と心配な場合は、このシステムを活用することで確認できます。

自筆証書遺言の特徴
自筆証書遺言は、遺言者が自分で書いて作成する遺言書です。費用がかからず手軽に作成できる反面、書き方の不備(日付がない、押印がないなど)が原因で無効になるケースも少なくありません。

また、自宅で保管されていることが多いため、「どこに保管したか忘れた」「複数作成してしまった」という状況が生まれやすいです。

法務局での「自筆証書遺言保管制度」の補足
令和2年7月から、自筆証書遺言を法務局で保管してもらえる制度が始まりました。この制度を利用すると、法務局が遺言書を預かってくれるため、紛失や改ざんの心配がありません。また、形式的な不備がないかのチェックも受けられます。

法務局に預けられた自筆証書遺言は、家庭裁判所での検認手続きが不要になるというメリットもあります。

無効となる遺言書とは?

遺言書が複数ある場合、そもそも「有効な遺言書かどうか」を確認する必要があります。

遺言書に不備がある場合

自筆証書遺言の場合、次のような不備があると無効になる可能性があります。

  • 日付が書かれていない、または「令和○年○月吉日」のような曖昧な記載
  • 本人の署名がない
  • 押印がない
  • 全文が自筆でない(パソコンで本文をうち、署名のみ自署はNG。ただし財産目録は例外あり)

公正証書遺言は公証人が作成するため、形式不備による無効はほとんどありません。

本人の意思能力が認められないケース

遺言書を作成した時点で、本人に十分な判断能力(意思能力)がなかった場合、遺言書は無効となります。例えば、認知症が進行していた、重度の病気で意識が朦朧としていたなどのケースです。

このような場合、医療記録や診断書などを基に、作成時点での判断能力を確認することになります。

遺言書が複数ある場合の手続きの流れ

遺言書が複数見つかった場合、具体的にどのような手続きを進めればいいのでしょうか。

自筆証書遺言は家庭裁判所で「検認」が必要

自宅などで保管されていた自筆証書遺言が見つかった場合、まず家庭裁判所で「検認(けんにん)」という手続きを行う必要があります。

検認とは

検認とは、家庭裁判所が遺言書の存在と状態を確認する手続きです。「この日時点で、このような内容の遺言書が存在していました」という記録を残すためのもので、遺言書の偽造や改ざんを防ぐ目的があります。

注意したいのは、検認は遺言書の「有効・無効」を判断する手続きではないということです。あくまで「こういう遺言書がありました」という事実を確認するだけです。

複数の遺言書がある場合は、すべての遺言書について検認を受ける必要があります(ただし、公正証書遺言と法務局保管の自筆証書遺言は検認不要)。

どの遺言書が有効かの判断は専門家と進めるべき

検認が終わった後、実際にどの遺言書を基に相続手続きを進めるかを決めることになります。日付や内容、形式の正しさなどを総合的に判断する必要があるため、弁護士や司法書士などの専門家に相談することを強くおすすめします。

特に、内容が一部だけ矛盾している場合や、公正証書遺言と自筆証書遺言が混在している場合は、法律的な解釈が必要になります。

まとめ

遺言書が複数見つかっても、落ち着いて確認すれば、適切に対応できます。

  • 原則として、日付が最も新しい遺言書が有効
  • 一部だけ矛盾している場合は、矛盾する部分について新しい遺言が優先される
  • 公正証書遺言は形式不備が少なく、信頼性が高い
  • 自筆証書遺言は家庭裁判所での検認が必要
  • 遺言書は勝手に開封したり破棄したりしてはいけない

有効な遺言書かどうかの判断は、「日付の新しさ」と「形式の正しさ」がポイントです。ただし、実際の判断は法律的な知識が必要になるため、専門家のサポートを受けることが大切です。

遺言書が複数あることで家族間の争いが起きてしまうのは、誰にとっても悲しいことです。そうした事態を避けるためにも、早めに専門家に相談し、全員が納得できる形で手続きを進めることをおすすめします。

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