更新日:2025.11.26 コラム
「うちの家族は仲がいいから、相続で揉めることなんてない」――そう思っていても、実際に相続が発生すると、思わぬところから対立が生まれることがあります。「争族」という言葉があるように、相続をきっかけに家族関係が壊れてしまうケースは、決して珍しくありません。
普段は仲の良い兄弟姉妹でも、配偶者の意見が入ったり、それぞれの生活状況が影響したりすることで、対立に発展してしまうこともあります。
この記事では、家族と相続で揉めないために、生前からできる対策について解説します。
相続トラブルの多くは、決してお金だけの問題ではありません。むしろ、長年積み重なってきた家族の感情が、相続をきっかけに表面化するケースが多いのです。
「兄ばかり可愛がられていた」「私が親の介護を全部引き受けた」「実家を継いだ長男が有利なのは不公平」――このような感情が、遺産分割の場で一気に噴き出すことがあります。金額の大小ではなく、「公平に扱われなかった」という思いが、対立の火種になるのです。
親が亡くなって初めて財産の全容を知り、「こんなに財産があったのに教えてくれなかった」「一部の相続人だけが知っていたのでは」という疑念が生まれることもあります。また、遺言書の内容について事前に話し合いがなかったために、「なぜこの分け方なのか」理解できず、不満が残ることもあります。
相続人本人は納得していても、その配偶者が「もっともらうべきだ」と主張するケースもあります。家族の問題に第三者の意見が入ることで、話がこじれることは少なくありません。
現金は分けやすいですが、自宅などの不動産は物理的に分けることが難しく、「誰が住むのか」「売却するのか」といった点で意見が対立しやすくなります。
これらの原因を理解した上で、生前に対策を講じることが、円満な相続への第一歩となります。
最も大切で、かつ最も難しいのが、生前に家族で相続について話し合うことです。「縁起でもない」と感じるかもしれませんが、元気なうちだからこそ、冷静に話せる環境があります。
例えば、「もし自分に何かあったときのために、みんなに伝えておきたいことがある」という形で、家族の集まる機会に切り出してみてはいかがでしょうか。財産の概要、誰に何を残したいか、大切にしてほしいことなど、親の想いを直接伝える機会は、後々の揉め事を防ぐ大きな力になります。
遺言書は、あなたの意思を明確に残す最も確実な方法です。公正証書遺言なら、公証役場で作成するため、形式の不備や紛失の心配もありません。
遺言書を作成する際のポイントは、「なぜそのように分けるのか」という理由も書き添えることです。単に「長男に自宅を相続させる」だけでなく、「長男は実家の近くに住み、今後も墓守をしてくれるため」といった背景を記すことで、他の相続人の理解を得やすくなります。
生きているうちに財産を少しずつ贈与することも有効です。孫の教育資金や子どもの住宅資金として贈与すれば、特例を使って税負担を抑えられる場合もあります。また、生前に「これはあなたに」と直接渡すことで、感謝の気持ちが伝わり、家族の絆も深まります。
ただし、贈与の記録はしっかり残し、他の相続人にも説明できるようにしておくことが大切です。
どこにどんな財産があるのか、一覧にしてまとめておくことも重要です。預貯金の口座、不動産、有価証券、保険、ローンや借入金など、プラスの財産もマイナスの財産も含めて記録しておきましょう。
デジタル資産(ネット銀行やオンライン証券口座など)も忘れずに。パスワードの管理方法や、連絡先も一緒に残しておくと、残された家族の負担が大きく減ります。
自宅や土地をどうするのか、生前に方針を決めておくことは非常に重要です。「長男が住む」「売却して分ける」「一定期間は売らずに保有する」など、あなたの考えを明確にしておくことで、後の争いを防げます。
もし不動産が主な財産で、特定の相続人に渡す場合は、他の相続人への配慮(代償金の準備や生命保険の活用など)も検討しましょう。
どんなに対策をしても、相続人間で意見が合わないこともあります。そんなときは、以下の方法も検討してみてください。
遺言書で、中立的な第三者(弁護士や司法書士など)を遺言執行者に指定しておく方法です。専門家が間に入ることで、感情的な対立を避けやすくなります。
認知症対策も兼ねて、財産管理を信頼できる家族に任せる「家族信託」という方法もあります。元気なうちに財産の管理方法や承継方法を決めておける点で、トラブル予防に役立ちます。
「まだ早い」と思わず、元気なうちに専門家に相談することをおすすめします。弁護士や司法書士、税理士などは、あなたの家族構成や財産状況に応じた最適なプランを提案してくれます。
専門家は多くの相続事例を見てきた経験から、「こういうケースでは後々揉めやすい」というポイントを熟知しています。あなたの家族構成や財産状況を聞いた上で、起こりうるトラブルを予測し、それを防ぐための具体的な提案をしてくれます。
また、家族で話し合う際に、専門家に同席してもらうという方法もあります。第三者が入ることで、感情的にならず冷静に話せることも多いのです。
「家族のことを他人に話すのは気が引ける」と感じるかもしれませんが、専門家には守秘義務があります。安心して相談してください。
家族間で揉めない相続のための対策は、決して難しいものばかりではありません。
これらのポイントを押さえることで、「争族」ではなく円満な「相続」を実現できます。
大切なのは、「まだ早い」と先延ばしにせず、今から少しずつ準備を始めることです。元気なうちだからこそ、家族とゆっくり話し合い、あなたの想いを伝えることができます。
相続マルシェでは、税理士・弁護士・司法書士と提携し、お客様の状況に応じた最適なご提案をいたします。事前のご相談は無料です。お気軽にお問い合わせください。
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