ブログ

借金は相続しなければいけない?基本知識と対応方法

更新日:2025.10.30 コラム

「親に借金があったら、子どもが返済しなければいけないの?」「相続したら借金も引き継ぐことになる?」家族が亡くなった際、こうした不安を抱える方は少なくありません。

実は、相続では預貯金や不動産などのプラスの財産だけでなく、マイナスの財産も引き継ぐことになります。しかし、必ずしも借金を背負う必要はなく、適切な手続きを行うことで相続を拒否したり、プラスの財産の範囲内でのみ引き継ぐことも可能です。

この記事では、借金がある場合の相続の選択肢から、相続放棄の手続き方法まで解説します。

借金も相続の対象になる

マイナスの財産も引き継がれる

相続では、故人(被相続人)の財産がすべて相続人に引き継がれます。これにはプラスの財産だけでなく、マイナスの財産も含まれます。

プラスの財産の例

  • 現金、預貯金
  • 不動産(土地、建物)
  • 有価証券(株式、投資信託)
  • 自動車、貴金属

マイナスの財産の例

  • 銀行からの借入金
  • クレジットカードの未払い金
  • 消費者金融からの借金
  • 住宅ローン
  • 未払いの税金

借金の額を把握することが重要

相続を判断する前に、故人にどれだけの借金があるかを調査することが重要です。

調査方法

  • 郵便物をチェック(請求書、督促状)
  • 通帳の引き落とし履歴を確認
  • 信用情報機関への照会(CIC、JICC、全国銀行個人信用情報センター)
  • 契約書や借用書の確認

相続開始から3ヶ月以内に判断する必要があるため、速やかな調査が必要です。

相続の3つの選択肢

借金の相続に対しては、3つの選択肢があります。それぞれの特徴を理解して、自分に合った方法を選びましょう。

選択肢の比較表

単純承認:すべてを相続する

プラスの財産もマイナスの財産もすべて引き継ぐ方法です。特別な手続きは不要で、相続開始から3ヶ月間何もしなければ、自動的に単純承認となります。

選ぶべきケース

  • プラスの財産が借金より明らかに多い
  • 借金がないことが確認できた
  • 住宅ローンが団体信用生命保険でカバーされる

相続放棄:すべてを拒否する

プラスの財産もマイナスの財産もすべて放棄する方法です。相続放棄をすると、最初から相続人ではなかったものとして扱われます。

選ぶべきケース

  • 借金がプラスの財産より明らかに多い
  • 相続争いに巻き込まれたくない
  • 故人との関係が疎遠で財産を受け取る必要がない

メリット

  • 借金を一切背負わなくて済む
  • 相続人が単独で手続き可能
  • 手続きが比較的シンプル

デメリット

  • プラスの財産も一切受け取れない
  • 取り消しが原則できない

限定承認:プラスの範囲内で相続

プラスの財産の範囲内でのみマイナスの財産を引き継ぐ方法です。限定承認では、借金がプラスの財産を上回っていても、その超過分は支払う必要がありません。

選ぶべきケース

  • 借金の総額が不明
  • プラスとマイナスどちらが多いか判断できない
  • 実家など手放したくない財産がある

メリット

  • 損失を出さずに相続できる
  • 思わぬ借金が判明しても安心

デメリット

  • 相続人全員の合意が必要
  • 手続きが非常に複雑
  • 実務上あまり利用されていない

相続放棄と限定承認の手続き

共通する重要ポイント:3ヶ月以内の申述

相続放棄限定承認は、どちらも相続開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述する必要があります。この期限を過ぎると、自動的に単純承認となり、借金も引き継ぐことになります。

起算点

  • 被相続人の死亡を知った日
  • 自分が相続人であることを知った日

相続放棄の手続きの流れ

ステップ1:必要書類の準備

  • 相続放棄申述書
  • 被相続人の住民票除票または戸籍附票
  • 申述人(相続放棄する人)の戸籍謄本
  • 被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本
  • 収入印紙800円分
  • 郵便切手(裁判所により異なる)

ステップ2:家庭裁判所への申述 被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に書類を提出します。

ステップ3:照会書への回答 家庭裁判所から照会書が送られてくる場合があります。相続放棄の理由などを記載して返送します。

ステップ4:受理通知 問題がなければ、相続放棄申述受理通知書が送られてきます。

限定承認の手続きの流れ

限定承認は相続放棄より複雑で、以下の手続きが必要です

ステップ1:相続人全員の合意 相続人全員が限定承認に同意する必要があります。一人でも反対すれば手

続きできません。

ステップ2:財産目録の作成 すべての相続財産を調査し、詳細な財産目録を作成します。

ステップ3:家庭裁判所への申述 限定承認申述書と財産目録を提出します。

ステップ4:相続財産の清算 プラスの財産を換価(売却)し、債権者に配当します。

限定承認は手続きが複雑なため、専門家のサポートが必須と言えます。

放置した場合のリスク

自動的に単純承認となる

相続開始から3ヶ月以内に相続放棄や限定承認の手続きをしなければ、自動的に単純承認となります。これは「何もしないこと」が「すべて相続する意思表示」とみなされるためです。

単純承認とみなされるケース

  • 3ヶ月間何も手続きしなかった
  • 相続財産を処分した(不動産の売却、預金の引き出しなど)
  • 相続財産を隠したり、使い込んだりした

借金を全額背負うことになる

単純承認となった場合、借金も全額相続することになります。たとえプラスの財産より借金の方が多くても、すべて支払う義務が生じます。

具体例

  • プラスの財産:500万円
  • 借金:1,000万円
  • 単純承認の場合:500万円の不足分も自己負担

債権者からの請求が始まる

相続が確定すると、債権者から返済を求められます。返済できない場合は、自己破産を検討せざるを得ない状況になることもあります。

まとめ

借金の相続は、判断を誤ると一生涯にわたる経済的負担を背負う可能性がある重要な問題です。特に相続開始から3ヶ月という短い期限内に、正確な財産調査と適切な判断が求められます。

重要なポイント

  • 借金もプラスの財産と同様に相続の対象
  • 相続放棄・限定承認は3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述
  • 放置すると自動的に単純承認となり、借金を全額背負う
  • 遺産分割協議だけでは債権者に対抗できない

相続が発生したら、できるだけ早く専門家に相談し、安全な方法で手続きを進めることをお勧めします。一人で悩まず、専門家の力を借りて、後悔のない選択をしましょう。

相続マルシェでは、税理士・弁護士・司法書士と提携し、お客様の状況に応じた最適なご提案をいたします。事前のご相談は無料です。お気軽にお問い合わせください。

お問い合わせはこちら↓

メールアイコン お問い合わせ ▶︎